高機能広汎性発達障害

高機能広汎性発達障害―アスペルガー症候群と高機能自閉症

高機能広汎性発達障害―アスペルガー症候群と高機能自閉症

杉山登志郎の、高機能広汎性発達障害アスペルガー症候群高機能自閉症)の診断、その他の障害についての記述
P43
>一般に深刻な性的な問題行動は少ないが、まれに性同一性障害フェティシズムなどがみられる。性同一性障害は彼らの自己イメージを結ぶ能力のつたなさから、自己の性的イメージの混乱が生じるのかもしれない。あるいは不適応の原因を自己の性的属性に求めて、反対の性に同一化することで不適応を解決しようとする独特のファンタジーなのかもしれない。

In Asperger’s Syndrome

14th World Congress of Sexology,1999、 P190


Title:In Asperger’s Syndrome
Author:Oliver Robinow
Institution:Vancouver Hospital
Country:Canada


Asperger’s Disorder(DSM-IV:299.80) is a pervasive development disorder related to Autistic Disorder (DSM-IV:299.00). Our clinic has observed a series of five with A.D.,who also show significant Gender Identity Disorder(DSM-IV:302.6) or Paraphilia (DSM-IV:302.00).


The presentation will discuss the potential causes of this significant overlap, both neurological and psychological that might explain these observations. Imlications for the evolution of Gender and Sexual Identity in the normal population will be discussed in conclusion.


試訳
アスペルガー症候群において


アスペルガー障害は、自閉性障害に関連する広汎性発達障害の一つである。われわれのクリニックではアスペルガー障害に、性同一性障害ないしは パラフィリアを合併した5症例を経験した。


発表では、この合併を引き起こす原因について、神経学的、心理学的観点から議論する。正常者におけるジェンダーおよびセクシュアルアイデンティティの発達への含意も結語では議論する。


試訳以上。


解説・コメント。
第7回GID研究会で、櫻庭先生がちらりと触れた、「1999年の香港での世界性科学会における、GIDアスペルガー合併症例発表例」について、一部関心があるようなので、abstractを載せました。
読んでのとおり、たいした内容ではありませんし、パラフィリアの合併も含むものです。
なお、私のメモによれば、質疑応答で、香港の医師(Ngさん?詳細不明)が
「わたしのところでは性同一性障害800例中、10例にアスペルガー障害がいた」
と言ってます。
それ以上のことは、私の記憶、メモ、関連文献等なく、不明です。

ドキュメント 両性の間で 「私は男」打ち明けたい

読売新聞九州版2005.5.25.


ドキュメント 両性の間で <2>「私は男」打ち明けたい


2003年7月、福岡県立若松商業高校(北九州市若松区)の保健室。ほかの生徒が来ない授業中を見計らってドアがノックされた。

 時谷千恵子養護教諭(61)は、見慣れた2年の女子生徒が入って来るのを見た。生徒はイスに腰掛けるととんでもないことを口にした。「先生。実は私、男なんです」

 男性名に改名し、今年4月、北九州市内の美容室に就職、美容師アシスタントを務める高橋圭介(19)(仮名)だった。現在、専門医に性同一性障害GID)と認定され、男性化を進めるホルモン療法を受けている。

 幼少のころから心が男性と認識して悩んできた。両親にも話せなかった心と体の違和感を時谷に打ち明け、「女子の制服が嫌なため、毎朝、着用に時間がかかり、遅刻を繰り返している。男子の学生服で通学したい」と訴えた。

 時谷は当初、高橋の障害を担任や校長にすら黙っていた。高橋はその後も頻繁に保健室を訪れた。しばらくして、本人が「男として生きるため、全校生徒に話して理解を求めたい」と、カミングアウト(告白)を強く希望し出したため、時谷は動き始めた。

 教職員に説明し、GIDを学ぶ職員研修会を開催。対応を検討するため学年主任らと対策小委員会も設立した。高橋の家族を交えての話し合いも重ね、専門医と連携をして環境を整えた。

 そして03年11月。高橋は体育館で、濃紺のブレザーに青色ネクタイの男子学生服を着て登壇し、全校生徒約720人を前に何度も書き直して完成させた「宣言文」を読み上げた。

 生理を迎えた時のショックなど誰にも相談できない苦悩、男子生徒として通学したいことを素直に表現。生徒、教職員たちから大きな拍手を浴びた。以後、「男として何の問題もなく通学できた」。


◆理解通じ社会に巣立つ


カミングアウトで新たな世界が開けたGIDの当事者は多い。東京都世田谷区議の上川あや(37)もその一人。体は男性でありながら女性として生活を送り、「黙っていれば男と気づかれなかった」。

 外見と性別が異なるため、トラブルを恐れて役所や病院、選挙の投票にも行けない、就職もできない人たちを上川は知っていた。「当事者の人権回復を図ろう」と、03年4月の同区議選に女性として立候補。「自分は男性だが、女性として生きている」ことをマスコミを通じて公にした。

 好奇の目にさらされたが、生き方に共感が広がり、当選できた。「当事者が政治の場に出ることで社会は変わる」。そう期待し、社会的弱者の救済や、差別のない社会を目指して奮闘している。

 まだ、GIDの受容度は高くはない。上川すら「当事者にはいろんな生き方がある」と、やみくもなカミングアウトは勧めない。

 高橋は自分の場合、「正解だった」と時谷に感謝している。勇気を振り絞ったからこそ、男性として堂々と社会に巣立てたのだ。

 しかし――。

 「ねえ、あんた。男に化けてるけど女でしょ」。高橋も時々、女性客から奇異のまなざしを向けられる。一々説明するのも疲れる。「いえ、男っすよ」と、おどけてみせるが、「じゃ、脱いでみなさい」。「お客さん、ここはそんな店じゃないですよ」と言ってかわす余裕を身につけた。

 偏見ゆえに、GID当事者がうつ病を患ったり、自殺に追い込まれたりするケースも多い。何気ない一言やまなざしが、当事者を傷つける。

 「おれ、平気です。だって男だから」と、高橋は笑って見せた。(文中敬称略)

http://kyushu.yomiuri.co.jp/magazine/document/006/do_006_050526.htm